現代の食生活において、健康に対する意識は年々高まっており、安心して伝統の食材を楽しむための知識が求められています。ひじきは、ミネラルや食物繊維、鉄分・カルシウムなどが豊富な海藻として、日本の伝統的な食卓に欠かせない存在です。しかし、一方で「ひじきにはヒ素が含まれている」という情報が広まり、特に妊婦さんやお子さま向けに不安の声があがることも事実です。この記事では、ためしてガッテンで紹介された正しい知識と調理法をもとに、ひじきを安全に楽しむためのヒ素除去方法を、詳しくご紹介していきます。
ひじきに含まれるヒ素の実態とそのリスク
ひじきのヒ素とは?
ひじきには、自然界に広く存在する成分であるヒ素が含まれています。これは、ひじきが海中のヒ素を吸収するためであり、産地や加工方法にかかわらず本来含まれる成分です。2004年にイギリスの食品規格庁が無機ヒ素の発がん性に関する報告を行い、一部で大きな話題となりましたが、その後、日本の厚生労働省や食品安全委員会は、通常の摂取量において健康被害が生じる事例は確認されていないとして、冷静な見解を示しています。
ヒ素と健康リスクの関係
ヒ素自体は、どの食品にも微量ながら存在しており、どのような食品でも極端に大量摂取しなければ健康被害は起こりにくいとされています。実際、日本においてひじきを適度な量で摂取している限り、ヒ素による健康被害が報告されたことはありません。また、ためしてガッテンで紹介された方法で調理を行えば、ひじきに含まれるヒ素の大部分を除去することができるため、安心して食卓に取り入れることが可能です。
ためしてガッテン推奨のヒ素除去下処理法
基本の「水で戻す」工程
ひじきは乾燥状態で販売されていることがほとんどで、調理する際には「水で戻す」という工程が欠かせません。ためしてガッテンでは、以下のような手順が推奨されています。
・たっぷりの水または80℃程度のお湯にひじきを30分間浸す
・その後、しっかりと水気を絞る
この水戻し工程だけでも、ひじきに含まれるヒ素の66%以上を除去できるとされています。特に、温度の高いお湯を使用する場合は除去率がさらに高く、80℃のお湯を用いると短時間で約93~97%のヒ素が除去できる可能性があります。
実験データで見る水戻しの除去効果
以下の表は、東京都福祉保健局による実験結果をもとに、芽ひじきおよび長ひじきでの水戻し工程におけるヒ素の除去効果をまとめたものです。
ひじきの種類 | 水戻し時間 | 元のヒ素含有量 | 溶け出したヒ素量 | 除去率 |
---|---|---|---|---|
芽ひじき | 30分後 | 1.30 mg | 0.48 mg | 約36% |
芽ひじき | 60分後 | 1.30 mg | 0.89 mg | 約68% |
長ひじき | 30分後 | 1.08 mg | 0.37 mg | 約34% |
長ひじき | 60分後 | 1.08 mg | 0.74 mg | 約68% |
このように、水戻しの工程を工夫するだけで、ひじきに含まれるヒ素の大部分を取り除くことが可能です。さらに、戻し水を捨てることや、余った湯で一度ゆでこぼしを行うなどの後処理を加えることで、ヒ素の除去効果はさらに高まります。
温度と水戻し時間による効果の違い
ひじきのヒ素は水に溶けやすいため、使用する水の温度や戻し時間によって除去の効果は大きく変わります。具体的には、以下のような違いがあります。
・20℃の水で30分戻す場合:ヒ素66%減
・80℃のお湯で30分戻す場合:ヒ素97%減(同時にカルシウムや鉄分も多少減少するが、重要な栄養素は概ね70%以上残留)
このことから、ヒ素除去を徹底したい場合は、80℃程度のお湯を使う方法が効果的です。ただし、栄養素の減少もあるため、栄養バランスを考慮した調理法を検討することが重要です。
安全にひじきを楽しむための調理のポイント
摂取量の目安と頻度
厚生労働省や世界保健機関(WHO)の基準によると、無機ヒ素の1日の摂取許容量は体重50kgの人で約107μgと定められています。これを基準に計算すると、ひじきを水戻し後に40g以上、かつ長期間にわたって毎日摂取しない限り、通常の副菜として食べる分には健康リスクはほとんどありません。たとえば、週に2~3回、ひじきの小鉢1杯分程度であれば、妊婦さんやお子さまも安心して取り入れることができます。
調味と加熱でさらに安心な仕上がり
水戻しやゆでこぼしでヒ素の大部分を除去した後は、電子レンジ加熱や煮込み調理によって水分を飛ばし、旨味や栄養をしっかりと取り入れることができます。ためしてガッテンが紹介する方法では、以下のようなポイントがあります。
・戻し後は軽く手で絞り、余分な水分を取り除く
・耐熱皿に広げ、ラップをせずに電子レンジで加熱する(例:10gに対して1分30秒、30gに対して3分)
・煮汁は必ず捨て、水で洗い流すことで、さらにヒ素の摂取を防ぐ
こうした工程を丁寧に取り入れることで、ひじきに含まれる有用な成分はそのままに、ヒ素の摂取量を大幅に減らすことができます。
具体的なレシピで実践!安心ひじき料理のご提案
ここからは、ためしてガッテンが推奨する調理法を実際の料理レシピに応用した例をご紹介します。どのレシピも、基本となる下処理をしっかり行った上で仕上げるため、安心して召し上がっていただけるものです。
ひじキッシュ
【材料(4人分)】
・芽ひじき(乾物):10g
・卵:2個
・ベーコン:30g
・プロセスチーズ(7ミリ角に切ったもの):50g
・生クリーム:大さじ5
・パセリ:大さじ1
・塩:小さじ約0.6
・こしょう:少々
【作り方】
1. ひじきはたっぷりの水または80℃程度のお湯で30分間戻し、軽くしぼります。
2. 戻したひじきを耐熱皿に広げ、電子レンジで1分30秒ほど加熱しておきます。
3. ボウルに卵、生クリーム、塩、こしょうを入れて混ぜ、その中にひじき、ベーコン、プロセスチーズ、刻んだパセリを加えてよく混ぜ合わせます。
4. 混ぜた材料を耐熱容器に入れ、600ワットの電子レンジで5分加熱して完成です。
このレシピは、再加熱することによりひじき本来の旨味が際立ち、野菜やチーズと相まって美味しく仕上がります。
長ひじきのザーザー混ぜ
【材料(4人分)】
・長ひじき(乾物):10g
・エビ(殻付きのまま楊枝を刺して、背わたを抜いたもの):5匹
・緑豆春雨:20g(食べやすい大きさにざっと水洗いしておく)
・ザーサイ(千切り):30g
・唐辛子(種を抜いて小口切り):1本
【A】
・水:200ml
【B】
・レモン汁:大さじ1
・ごま油:大さじ1
・香菜(ざく切り):適量
【作り方】
1. ひじきは十分な水または80℃のお湯で30分戻し、軽くしぼった後、耐熱皿に広げて電子レンジで1分30秒加熱します。
2. 鍋にエビと【A】の水を入れ、中火で3~4分程煮ます。エビが半生の状態になったら、一度取り出し、殻を剥いて縦半分に切っておきます。
3. 鍋に戻したひじきと春雨を加え、煮汁がほとんどなくなるまで中火で加熱しながら、具材に味をしっかり染み込ませます。
4. 火を止め、冷めたらエビと【B】の調味料を加え、よく混ぜ合わせたら完成です。
エビとザーサイ、唐辛子のピリッとしたアクセントが、ひじきの独特な風味と見事に調和し、爽やかかつ食欲をそそる一品となります。
ひじきのお花焼き
【材料(4人分)】
・芽ひじき(乾物):10g
・豚ひき肉:200g
・干ししいたけ:大さじ2(約2枚分を水で戻し、みじん切りにする)
・長ネギ(みじん切り):大さじ4
・しょうが(みじん切り):小さじ2
・餃子の皮:15枚程度
・ごま油:適量
・砂糖:小さじ1強
・塩:小さじ約0.5
・こしょう:少々
【作り方】
1. ひじきはたっぷりの水または80℃のお湯で30分戻し、軽くしぼった後、耐熱皿に広げて電子レンジで1分30秒ほど加熱します。
2. 戻した干ししいたけ、長ネギ、しょうがをみじん切りにし、豚ひき肉に塩を加えてよく混ぜ合わせた後、他の材料もすべて加えてさらに混ぜます。
3. 餃子の皮の中央に具材をのせ、周りを包み込むように折りたたみます。
4. フライパンにごま油を熱し、折りたたんだ面を下にして両面がこんがり焼けるまで焼いたら完成です。
お花焼きは、ひじきと肉の旨味が一体となり、外はカリッと中はジューシーに仕上がるため、パーティーや家族の食卓に最適なメニューです。
バランスの良い食生活とひじきの魅力
どんな食品も適量が大切
どれだけ食品の下処理を工夫しても、あまりに一種類の食材ばかりを大量に摂取するのは健康にとって好ましくありません。ひじきに含まれる必須ミネラルや食物繊維は、他の野菜や海藻類とバランスよく取り入れることで、その真価を発揮します。ためしてガッテンが強調するように、正しい下処理でヒ素を除去しつつ、普段の食卓に上手に組み合わせることで、より健康的な生活を実現できます。
栄養素を逃がさない調理法の工夫
ひじきにはヒ素除去のための水戻し工程の他にも、煮汁や戻し水をうまく活用する工夫があります。例えば、煮物にする際に、戻し水に溶け出したミネラル分の一部は捨てずに、具材とともに利用することで、栄養の損失を最小限に留めることが可能です。また、電子レンジでの加熱を取り入れることで、短時間で美味しさと旨味を引き出しながら、過度な調理による栄養素の低下を防ぐこともできます。
安心してひじきを楽しむためのまとめ
ヒ素の存在は事実だが、正しい調理でほぼ安心
ひじきに含まれるヒ素は、自然界由来のものであり、どの食品にも微量存在する成分です。しかし、ためしてガッテンが紹介するような正しい下処理・調理法を実践すれば、ヒ素の量は90%以上除去できるため、普段の食生活において問題となるレベルには達しません。これまでの調査や実験でも、日本人が通常の量を摂取している限り、健康被害の事例は報告されておらず、妊娠中の方や乳幼児も安心して取り入れられるとの見解が示されています。
実践するためのポイント
安心してひじきを食べるためには、以下のポイントを意識しましょう。
・十分な水または80℃程度のお湯で30分間戻し、しっかりと水気を抜く。
・戻し水や煮汁は必ず廃棄し、ヒ素の再摂取を防止する。
・栄養バランスを考え、ひじき単体ではなく、他の野菜や食材と組み合わせる。
・調理には電子レンジ加熱や煮込み工程を活用し、旨味を閉じ込めつつ栄養素の損失を防ぐ。
これらの工程を守ることで、「ヒ素除去で安心ひじき調理」が実現でき、健康的な食生活をサポートします。
最後に
ひじきは、長年にわたり日本人の食文化に根付いた伝統食品です。たしかに、ひじきにはヒ素が含まれているという事実は否定できませんが、正しい下処理と調理法を採用すれば、そのほとんどを除去することが可能です。ためしてガッテンが推奨する方法を実践することで、ヒ素のリスクを大幅に軽減し、ミネラルや食物繊維などの栄養素を豊富に取り入れることができます。
安心してひじきを楽しむためには、「適量を守る」「バランスの良い食生活を心がける」という基本に立ち返ることが大切です。ひじきの魅力あふれるレシピも多く、日々の献立に変化と栄養をもたらしてくれるでしょう。ぜひ、今回ご紹介したヒ素除去の手法とレシピを参考に、家族や友人と一緒に安心で美味しいひじき料理を楽しんでみてください。
これからも、健康と美味しさを両立する調理法の工夫を取り入れながら、伝統の食材の良さを改めて実感し、毎日の食生活に役立てていただければ幸いです。